馬が人を乗せるまで②
2020.12.10

馬が人を乗せるまで②

(①からの続きです)

今回は、人が騎乗できるように馬を馴らす「騎乗馴致」について簡単に紹介します。(以下、競走馬の例です。)
騎乗馴致のことをブレーキングといいますが、これは馬同士の約束事を壊し(break)、新たに人と馬との約束事を構築することを意味します。
騎乗馴致の目的は、手綱等で馬を御せるようにすること、鞍を付けて馬に乗れるようにすることです。具体的には、タオルパッティングからはじまり、引き馬、腹帯馴致、ライジング、ドライビングなどの過程を段階的に踏んでから、人を乗せるようにしていきます。

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1 タオルパッティング
タオル等で馬が触れられることを嫌う部位(耳の後ろ、尻部、背中、脇下等)に接触し、鞍を載せて乗れるように慣らしていきます。

2 引き馬(曳き馬)
人がリードしながら前進、停止を繰り返し、馬が合図に従うようにしていきます。

3 ランジング
調馬索※を使って馬に円運動させながら、人の合図で常歩(なみあし)、停止等ができるようにしていきます。このとき人は、円の中心に位置します。
※馬の調教に用いる長い紐

4 腹帯馴致
馬に腹帯※を装着して、その圧迫に慣らしていきます。
※馬に鞍を固定する帯

5 ドライビング
調馬索を使って馬を前進させながら、ハミ※を通じた方向転換を教えていきます。このとき人は、馬の後方に位置します。
※馬の口に噛ませる棒状の金具

ドライビングができるようになってから、騎乗のステージに進んでいきます。これらの訓練を踏むことで、馬は人を乗せるようになります。

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ここまで、馬が人を乗せるための訓練を紹介しましたが、馬の仲間ならば訓練で必ず人を乗せるようになる、というものではないようです。
例えばシマウマは、小さい頃は馴致がうまくいくものの、大きくなると急に反抗的になり、人の手でコントロールすることができなくなるといわれています。

馬は自身に危害が及ばないことを理解すると、多くのことに慣れる特性を持っています。訓練を通じて馬と人との信頼関係をしっかりと構築することが、人が騎乗できるようになる近道だと言えます。